救急救命にあたり大変利便性の高いドクターヘリですが、いくつか問題も抱えています。その一つがヘリコプターという乗り物ならではの問題です。
ドクターヘリは原則として有視界飛行を義務づけられているため、夜間や霧などで視界の悪い時には飛ぶことができません。(有視界飛行とは、計器やレーダーに頼らず、パイロットが目視だけで飛行することを言います)さらに、安全上風速が15メートルや20メートルといった強風の中でも飛行は不可能です。これはヘリコプターという特性も関係しているので仕方のないことですが、特に夜間飛行ができない事については現場の看護師たちからはもどかしいと感じられることもあるそうです。ドクターヘリを使って臓器移植のための臓器を運ぶ場合もあり、一分一秒でも時間が惜しいこともあるからです。このため、夜間に関しては消防署が持つ防災ヘリを利用して24時間体制でドクターヘリを運用している地域もあります。
そして、ドクターヘリには発着場所の問題もつきまといます。ヘリコプターの離着陸には普通、専用のヘリポートが使われますが、出動先にそうった場所があるとは限りません。出動先の近くに適当なヘリポートがなければ学校の校庭や空き地などを利用するようになっていますが、着陸に際しても騒音や強い風を伴うために広い場所さえあればどこでもいいというわけではありません。そのため、周囲の安全を確保するために警察や消防とも連携して着陸場所が決められています。
着陸場所の確保の点からもドクターヘリにはあまり大型機は使用されず、搭乗できる人数も六人程度と限られます。普通、パイロットの他に整備士、医師、看護師が乗り組み、現場からは患者一名と付き添い一名程度を搬送することになります。ヘリに乗り組む医師や看護師としても、限られた装備の中で最適な対応をしなければなりません。